ページの上部へ

BLOG ブログ

ホーム

ブログ

2025.09.29

顎変形症の症状チェック|受け口・開咬・顔の歪みが気になる方へ

顎変形症は、上顎や下顎の骨格的な位置や大きさの異常により、咬み合わせや顔貌に影響をもたらす疾患です。単なる歯並びの問題とは異なり、顎の骨そのものに問題があるため、通常の矯正治療だけでは改善が困難な場合があります。

多くの患者様が、見た目の問題だけでなく、食事や発音、顎関節の痛みなど、日常生活に支障をきたす症状に悩まされています。しかし、顎変形症は適切な診断と治療により改善が可能な疾患であり、場合によっては保険適用での治療も受けることができます。

顎変形症の症状は多岐にわたり、患者様ご自身では気づきにくい場合もあります。また、成長期から徐々に症状が現れることが多いため、それが当たり前の状態だと思い込んでしまうこともあるでしょう。

本コラムでは、顎変形症の代表的な症状について詳しく解説し、セルフチェックができるポイントをご紹介いたします。ご自身や家族の症状に当てはまるものがないか確認していただき、必要に応じて専門的な診査を受けていただくきっかけとなれば幸いです。

顎変形症の基本的な理解

顎変形症とは、上顎骨や下顎骨の位置関係や大きさに異常があることで、咬み合わせや顔の形に影響を与える状態を指します。先天的な要因により生じることもあれば、成長期の環境的要因や外傷などにより後天的に発症することもあります。

この疾患の特徴は、単純に歯の位置だけの問題ではなく、顎の骨格そのものに問題があることです。そのため、歯列矯正だけでは根本的な解決が困難で、外科的な治療が必要になることが多くあります。

顎変形症は機能的な問題と審美的な問題の両方を引き起こします。機能的な問題としては、食物を噛み切る・噛み砕く機能の低下、発音の困難、顎関節への負担増加などがあります。審美的な問題としては、顔の左右非対称、下顎の突出、口元の突出などが挙げられます。

重要なことは、顎変形症は医学的な疾患として認められており、機能的な問題が伴う場合は健康保険の適用を受けて治療することが可能だということです。ただし、保険適用を受けるためには一定の基準を満たす必要があり、専門的な診査・診断が不可欠です。

受け口(下顎前突)の症状と特徴

受け口は、下顎が上顎よりも前方に突出している状態で、顎変形症の中でも比較的認識しやすい症状です。正面から見ると下の歯が上の歯よりも前に出ており、横顔では下顎のラインが特に強調されて見えます。

軽度の場合は歯列矯正のみで改善できることもありますが、骨格的な問題が大きい場合は外科手術を伴う治療が必要になります。下顎骨が過度に発達していたり、上顎骨の発育不全があったりすることが主な原因となります。

受け口の患者様が経験される具体的な困りごととしては、前歯で食べ物を噛み切ることが困難になることが挙げられます。特にサンドイッチやリンゴなどを前歯で噛み切る動作が難しく、いつも奥歯で食べ物を処理しなければなりません。

発音面では、サ行やタ行の発音が不明瞭になることがあります。舌と歯の位置関係が正常と異なるため、これらの音を正確に発音することが困難になり、話し言葉に影響を与えることがあります。

また、下顎の突出により口元の緊張感が増し、意識的に口を閉じようとしても自然な口元の形を保つことが困難な場合があります。これにより、無意識に口が開いてしまったり、口を閉じるために必要以上の力を使ったりすることがあります。

開咬の症状と日常生活への影響

開咬は、一般に前歯部開咬を意味し、奥歯で噛んだ時に前歯が咬み合わない状態を指します。前歯の間に隙間が空いており、舌が見えてしまうことが特徴的です。この状態では前歯での切断機能が全く働かないため、食事に大きな支障をきたします。

開咬の原因は多様で、指しゃぶりや舌突出癖などの口腔習癖、口呼吸、遺伝的要因などが関与します。特に成長期にこれらの習癖が継続すると、顎の正常な発育が阻害され、開咬が形成されることがあります。

食事面での困難は非常に深刻で、麺類を噛み切ることができない、肉を前歯で切断できないなど、基本的な食事動作に支障をきたします。そのため食べ物を小さく切って摂取する必要があり、外食時などに不便を感じることが多くあります。

発音への影響も顕著で、特に英語の発音において問題となることが多く見られます。舌と歯の接触が正常に行われないため、正確な発音が困難になり、語学学習や国際的なコミュニケーションに影響を与えることもあります。

また、常に前歯が開いているため、口の中が乾燥しやすくなります。これにより虫歯や歯周病のリスクが高まり、口臭の原因となることもあります。さらに、前歯で物を噛めないため、奥歯への負担が集中し、奥歯の早期摩耗や顎関節への負担増加を招くことがあります。

顔の歪みと顎のずれの確認方法

顔の歪みは、左右の顎の発育の差や顎関節の問題により生じることがあります。鏡の前で正面を向いた時に、顔の中心線と歯の中心線が一致しているか確認してみてください。鼻の先端から顎の先端まで引いた仮想的な線と、前歯の中心線が大きくずれている場合は注意が必要です。

咬み合わせの状態も重要な確認ポイントです。口を閉じた時に上下の歯の中心線が一致しているか、左右どちらかに偏って噛んでいないかを確認してください。無意識に一方の歯でばかり噛む癖がある場合は、顎の位置に問題がある可能性があります。

笑った時の口角の高さも観察してみてください。左右の口角の位置が大きく異なる場合や、片側だけが上がりにくいと感じる場合は、顔面の非対称性を示している可能性があります。

顎を動かした時の違和感も重要なサインです。口を大きく開けた時に顎がカクカクと音を立てる、開けにくい、痛みがあるなどの症状がある場合は、顎関節に問題が生じている可能性があります。

写真で確認する方法も有効です。正面から撮影した写真を見て、左右の目の高さ、鼻の位置、口角の位置などを比較してみてください。また、横顔の写真では顎のラインが極端に出ていたり、引っ込んでいたりしないかを確認できます。

機能的な問題による生活への支障

顎変形症による機能的な問題は、患者様の生活の質に大きな影響を与えます。咀嚼機能の低下により、食べ物を十分に噛み砕くことができず、消化器系への負担が増加することがあります。また、食事に時間がかかったり、特定の食品を避けなければならなかったりするため、栄養摂取にも影響を与える可能性があります。

睡眠時無呼吸症候群との関連も指摘されています。特に下顎が小さい場合や後退している場合は、舌の位置が後方に下がりやすく、気道を狭窄させることがあります。これにより睡眠の質が低下し、日中の疲労感や集中力の低下を招くことがあります。

顎関節症の併発も多く見られます。不適切な咬み合わせにより顎関節に過度な負担がかかり、関節円板の変位や関節の炎症を引き起こすことがあります。これにより口の開閉時の痛みや制限、頭痛、肩こりなどの症状が現れることがあります。

心理的な影響も無視できません。見た目に対するコンプレックスから人とのコミュニケーションを避けるようになったり、笑顔を見せることをためらったりする患者様も多くいらっしゃいます。これが自信の喪失や社会的な活動の制限につながることもあります。

早期発見と適切な治療の重要性

顎変形症は早期に発見し、適切な治療計画を立てることが重要です。成長期であれば、成長を利用した治療により外科手術を回避できる場合もあります。また、成人であっても早期の診断により、より効果的で負担の少ない治療選択肢を提示できることがあります。

治療方法は症状の程度により異なりますが、軽度の場合は矯正治療のみで改善することもあります。中等度から重度の場合は、外科手術と矯正治療を組み合わせた外科矯正治療が必要になることがあります。

外科矯正治療は、顎の骨切り手術により顎の位置を修正した後、矯正治療により歯並びを整える治療法です。手術と聞くと不安に感じられるかもしれませんが、現在は技術の進歩により安全性が向上し、より自然で美しい結果を得ることができるようになっています。

近年では、「サージェリーファースト(Surgery First)」と呼ばれる治療法も注目されています。これは従来の術前矯正を省略し、先に外科手術を行うことで、見た目の改善を早期に実感できるだけでなく、矯正期間の短縮にもつながる治療法です。ただし、適応には専門的な判断が必要であり、すべての症例に適用できるわけではありません。また、サージェリーファースト法は原則として自費診療となります。

保険適用の条件を満たす場合は、外科矯正治療を保険診療で受けることができます。ただし、保険適用を受けるためには指定医療機関での治療が必要であり、術前・術後の矯正治療を含めた総合的な治療計画が必要になります。

まとめと相談のすすめ

顎変形症は、単なる見た目の問題ではなく、機能的な問題を伴う医学的な疾患です。受け口、開咬、顔の歪みなどの症状に心当たりがある方は、一度専門的な診査を受けることをお勧めいたします。

当院では、患者様の症状を詳しく診査し、最適な治療計画をご提案いたします。軽度の症状であっても、将来的な問題を予防するための治療選択肢がある場合もあります。また、外科矯正治療が必要な場合は、信頼できる口腔外科医との連携により、安心して治療を受けていただける体制を整えています。

ご自身の症状について不安に感じることがございましたら、まずはお気軽にご相談ください。専門的な診査により現在の状態を正確に把握し、患者様にとって最良の治療方針を一緒に考えさせていただきます。美しく機能的な咬み合わせを実現し、より快適な日常生活を送っていただけるよう全力でサポートいたします。

記事監修医師
菅野 友太郎 院長

菅野 友太郎 医師

A CLINIC デンタル 審美歯科 矯正歯科